はてなのこたえ

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仮想通貨Libra(リブラ)の意義と、ビットコインがデジタル・ゴールドになるという意見について思うことを書いてみる

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2020年12月4日:追記
リブラは「ディエム」に改名したようです。

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仮想通貨Libra(リブラ)について。
Libraの考え方は一言で言えば「世界通貨」である。
地政学リスクの大きい新興国では、自国の通貨が脆弱であったり、銀行口座を持つことができない多くの消費者が存在するという問題を抱えている。

リブラはそうしたリスクを抱える国の人々に、世界通貨とそれを保管する仕組みを提供しようとしている。

通貨リスクは新興国だけの問題ではない。
先進国である日本や米国などでも同様に、円やドルの財政破綻を懸念する意見が存在する。

これまで一部の人々の間では、円の財政破綻を恐れ、資産の一部を外貨(米ドルやユーロなど)に替えておくというリスクヘッジが行われていた。

しかし世界通貨であるリブラを持っていれば、自国通貨の破綻リスクから解放される。
日本人からすると、「円」資産を持つだけでなく、資産の一部を「リブラコイン」に替えておくことで、実質的には日本を含めた世界の通貨(リブラの裏付けとなっている通貨)に分散投資していることと同じだからだ。

現在発行が検討されている「リブラコイン」は、その資産に裏付けがあるという点で、「ビットコイン」とは大きく異なっている。
リブラコインはその全額が、世界各国の

  • 現金または現金同等物
  • 超短期国債

を裏付けとして発行される。

※リブラコインの裏付けとなる資産の通貨別の内訳は、50%が米ドル、18%がユーロ、14%が円、11%がポンド、7%がシンガポールドルらしい。やや米ドル依存率の高い通貨である。

こうした通貨バスケットの仕組みは、シンガポールドルに似ている。

※シンガポールドルは、主要な貿易相手国の通貨に連動したレートを採用し、その変動幅が一定になるような管理変動相場制を採用している。

リブラコインを持っていれば、1つの通貨(コイン)で複数の国に分散投資ができる。という安心が買える一方で、他国の地政学リスクや為替変動リスクも背負うということになる。

とはいえ、世界分散投資のメリットと、世界共通の送金・決済機能が提供されるのであれば、こうした仕組みは新興国の人々だけでなく、先進国に住む我々にとってもメリットになると言えるだろう。

ビットコインがデジタル・ゴールドになるという意見

リブラコインが一定の資産の裏付けがある仮想通貨であるのに対し、ビットコインは「突然変異的に登場した、異質で得体の知れない新しいもの」という認識だ。(ビットコインには裏付けとなる資産が何一つない)

ビットコインを組成するブロックチェーン・テクノロジーは革新的で、これから期待できる技術だと思うし、ビットコインと同じ仕組みを持った仮想通貨(中央銀行が発行を検討するデジタル通貨、通称CBDCも含めて)が将来、幅広く流通していくというのは間違いないだろう。

人々に使われる仮想通貨が、ビットコインになるのか、リブラコインになるのか、CBDCになるのかは、自分はもちろん、まだ誰にもわからない。もちろん、勝者となる通貨は1つだけではなく、利用され続ける仮想通貨とともに、そのうち消えていく仮想通貨もたくさん出てくるだろう。

様々なデジタル通貨が流通し、交換されるような社会になるのだろう。(世界の中央銀行が寛容的であれば、の話だが)

また、現物資産や権利などをトークン化した「暗号資産」についても将来的に大きく広がり、多くの人々に新たな投資の機会が与えられるだろう。しかし暗号資産への投資については、詐欺的なものが増加することは容易に想像でき、株式と同じような管理や規制の仕組みが必要だ。

ただ、ビットコインの価値については疑問符が付く。
最近では、「1ビットコインが○○円まで上昇する」といった意見も出てきているわけだが、自分からすると、ビットコインの堅牢性がどれほど優れていようと、ビットコインの利用者がどれだけ増え、どれだけ幅広く流通したとしても、そこに資産としての値付けが行われるというのが理解できないからだ。

なので、将来自分が送金や決済の手段としてビットコインを「利用する」ことはあるかもしれないが、1ビットコインの価値が1円になろうと、5,000万円になろうと、自分がビットコインに「投資する」ことはないだろう。

昨今、ビットコインの値上がりとともに「ビットコインはデジタル・ゴールドとしての地位を獲得した」という意見も目にするが、こうした意見に対しても自分は懐疑的である。

金には投資需要の他にも、工業品需要や宝飾品需要といった実需(消費)が存在する。
だからこそ、金という資産に一定の値付けが行われるというのは理解できる。

わかりやすく言うと、金でできた指輪やイヤリングといったアクセサリー類や美術品、金塊などをもらえば、誰もが嬉しい気持ちになるが、ただのデジタルデータであるビットコインをもらっても、そのデータに「現在いくらの資産価値がある」という点を除いては、何一つ喜びがない。

こうした自分の考えはまったく的外れなのかもしれないが、上記のような考えから、現時点では、将来的にリブラが普及すれば、リブラコインを持つことはあるかもしれないが、1ビットコインの価格が5,000万円になろうと、1円になろうと、それを資産として保有することはないと思う。

また、基本的な送金・決済機能を持つ暗号通貨や、改ざん不能な堅牢性を持つ暗号資産は、いくらでもその技術をコピーして新たな仮想通貨や暗号資産を生み出すことができるのだから、やはり価値の裏付けがない暗号通貨や暗号資産はいずれコモディティ化し、その評価はブームの終焉とともに消えていくのではないだろうか。

と、なぜこんな記事を書いたのかというと、自分自身、次世代通貨の機能やあり方について、興味は高まってきているものの、これまで深く気にかけたことがないからだ。

勉強不足だとわかっていて書いているものなので、もしビットコイン推進派の方がいたら、いろいろな意見をくれると嬉しいです。