かなり昔の話なのですが、「習慣の力」という本を読んでいた時に、脳の仕組みはコンピューターのCPU・メモリ・キャッシュにそっくりだと思いました。
そして、「優秀な人がこの仕組みを上手く利用していること」、「習慣のメリット・デメリット」にも気づきました。
今日は、私たちの脳を上手く使う方法について、私なりに気づいたことを共有します。
まずはじめに、コンピューターについて簡単に説明しておきます。
私たちが利用するコンピューターは、
- CPU
- メモリ
- キャッシュ
の3つの部品で動作しています。(もちろん、他にも数多くの部品が使われています)
CPUとは、いわばコンピューターの「パワー」に相当するものです。記憶装置ではなくエンジン(動力)です。
メモリは、簡易的な記憶装置です。あらかじめ記憶しているデータを高速で呼び出します。パワーはほとんど使いません。
キャッシュは、メモリよりも更に高速に動作する仕組みです。記憶容量はメモリよりも小さいのですが、高速かつパワーを全く消費せず、データを呼び出します。
コンピュータープログラムは、動作回数が増えるたび「より高速に、より省エネで」動きます。
- 1回目の動作
- CPUを使う(低速かつパワーが必要)
- 2回目の動作
- メモリから呼び出す(高速かつパワーをほとんど使わない)
- 3回目の動作
- キャッシュを使う(超高速かつ全くパワーを使わない)
このように動作を繰り返すことで、使う部品が「CPU → メモリ → キャッシュ」へと移り変わり、それに伴い、処理スピードが上がり、かつ省エネになっていきます。
コンピュータープログラムが、私たちの脳の仕組みを意識して作られたのかどうかはわかりません。しかし、私たちの脳の仕組みは、これと似ています。
人生ではじめて足し算をした時は難しかった
例えば、人生ではじめて「足し算」を覚えたときは、誰でも苦労したはずです。
簡単な足し算を1問解くのに時間がかかりますし、10問やれば脳が疲れてヘトヘトになります。(CPU)
しかし、慣れてくると解答にたどり着く時間は短縮され、スラスラ解けるようになります。(メモリ)
そして今、大人になった私たちは、簡単な足し算なら考えるまでもなく、暗算で答えを出すことができます。(キャッシュ)
このように、私たちは特定の作業を繰り返すことで学習し、頭を使わなくても高速に問題解決できるような優秀な脳を持っています。
習慣のメリット・デメリット
私たちの人生は、習慣に支配されています。
デューク大学の学者が2006年に発表した論文によると、私たちの行動の約45パーセントが習慣で成り立っているとのこと。
私たちは24時間、1つ1つの行動について詳しく検討することをしません。無意識に意思決定し、無意識に行動していることがたくさんあります。
例えば、文章を書く時に毎回「鉛筆を右手で持つか、左手で持つか」とは考えませんよね。利き手に従って、無意識に鉛筆を持ち文章を書いています。
もし、すべての動作で「CPU」を使っていたら、脳はヘトヘトになって疲れてしまいます。
だからこそ、脳が「重要ではない」と判断したことや、過去の経験・学習から「答えが概ねわかっていること」については、意識することなく「メモリ」や「キャッシュ」で処理してくれるようになっています。
脳はとても優秀なのです。
優れた人は「習慣作り」が上手く、「良い習慣」をたくさん身につけていると、数多くの書籍にも書かれています。
脳のデメリット
- 重要ではないこと
- 過去の経験や学習から概ね答えがわかっていること
についてはパワーを使うことなく、高速で自動処理してくれる私たちの脳は優秀です。
しかし、脳は逆に「一度習慣づいたことを変えようとしない」特性があります。
人生には変化しなくてはならない時や、過去の経験・学習から得た答えが間違っていることもあります。
これまで重要ではなかったことが、ある日突然、重要なことに変化するかもしれません。(例えば、これまで全く気にしていなかった健康状態が良くないと、医者に診断された場合など)
しかし、このような時ですら「とても楽であり、何も考えていない状態」に慣れていると、脳は変化を拒んでしまうのです。
超高速・省エネな「キャッシュ」処理はとても便利な機能ですが、頼りすぎてしまうと「思考停止」に陥ってしまう危険性があります。
年齢とともに脳が衰える理由
私たちは、幼い頃から数多くのイベントを経験します。
はじめて絵を書いた時や、はじめてボールを蹴った時、はじめて海外旅行に行った時など、はじめての経験で大きな刺激を得ます。
- CPUを使わざるを得ない
- ワクワクとドキドキが共存する
このような状況が私たちの脳を活性化させます。
逆境やピンチが大きな成長につながるのもこれと同じです。
逆境・ピンチに陥ると、人は今の状態から変わらざるを得ないことに気づき、もがきます。結果的に、それが脳の活性化に繋がり、私たちを成長へと導いてくれます。
一方、加齢によって年老いてくると、新しい経験をする機会が減ってきます。
あれもこれも知っている。たとえ経験したことがないイベントでも、過去の経験や知識からどのようなものであるかが概ね想定できる。
年を重ねた人が落ち着いて見えたり、多少の物事で動じないのも、こうしたことが影響しているのだと思います。
こうした「知見から得られる予測」は、私たちの身を守ることに一役買ってくれますが、逆に「脳への刺激」をなくします。
意識的に「脳への変化」を促さなければ、年齢とともに「思考停止(習慣と経験に頼る癖、新たな行動を起こそうとしない不感症)」が加速してしまうと私は考えています。
普段とは違う帰り道を歩くということ
私たちの社会はどんどん便利になっています。
何も考えなくても高度なことができてしまう便利な社会の到来は、私たちをより楽にし、新しい世界へと導いてくれるでしょう。
しかしその反面、私たちが持つ大切な要素である「考える力(脳のCPUを働かせること)」を奪っているような気がします。
また、私自身も年齢とともに脳が衰えないよう、CPUの活用になりそうなことを意識的にやっています。
とても小さなことですが、あえて普段とは違う帰り道を選んでみたり、これまで一度も経験したことがなかったことにチャレンジしてみたりしています。
脳がヘトヘトになるほど疲れるようなことなら、なお良いでしょう。
先ほど、「優れた人は習慣作りが上手く、良い習慣をたくさん身につけていると、数多くの書籍にも書かれている」と述べました。
しかし私が周りを観察する限り(観察といってもネットウォッチングですが)、本当に優秀な人は「CPUを使う行動を意識的、または無意識的に行っている」ように思います。
習慣的な行動と非習慣的な行動。両者のバランスを保つことが、大切な脳の力を維持していくためには重要なことだと私は考えています。