私は、自分が頭の良い人間だとは思っていません。
大切な時期に勉強から逃げてきた側の人間なので、社会であたりまえとされている一般教養が抜け落ちているのです、残念ながら。(これは今、とても後悔しています)
しかし今はなんとか、ビジネスや投資で上手くやることができています。
このような私がなぜ、うまくやってこれたのか。その理由は、これまでの20年はITをフル活用し、最新の情報を貪ってきたからだと考えています。
とにかく大量のインプットをし、それらを効率よく処理することが強力な武器として機能していたように思います。
私は今年で35歳になりましたが、はじめてインターネットに触れたのが、ちょうど20年ほど前、15歳くらいのころでした。
インターネットに夢中だった私は、わからないことは検索エンジンで調べ、文章は手書きではなくタイピングで記録し、最新のニュースはRSSを使って入手し、情報はモバイル端末を使って移動しながら見るようにしました。
とにかく、誰よりも速く、誰よりも多くの情報を得て、今一番ホットな効率化アプリと携帯端末を使うことが大切だと考えていました。
このようなやり方が時代にマッチし、ITの力が自分の能力を何倍にも拡張してくれたおかげで、頭が良いとは言えない人間でも、なんとか上手くやってこれたというわけです。
当時、ITをフル活用する人はまだ少なく、これまでの20年は、おそらくこの方法が最もベストなやり方だったのではないかと思います。
消費者の行動が変化し、時代が変わる
しかし、ここ数年で時代に大きな変化が表れました。
スマートフォンが本格的に普及し、これまでインターネットに接続しなかった多くの人々がオンラインになり、「1億総オンライン化」と呼べる状況になっています。
彼らが好んで使うのはTwitterやInstagramといったSNSです。通信速度の向上に伴って、「テキスト → 写真 → 動画」の順にリアルタイムでコミュニケーションがとれるようになっていきました。
多くの人がオンラインに接続し、そこでリアルタイムに情報を入手できるようになる。検索エンジンで調べなくても、言葉でグーグルに聞けばすぐ回答が得られる。
この20年間で優位性のあった「ITを徹底的に利用する」というやり方は、もはやみんながやっていることであり、そこに優位性を見出すことは難しくなってきたと感じています。
おそらくこの流れはさらに加速するでしょう。そのような中で、自分がこれ以上ネットにのめり込むのは良い選択とは言えない、そのように思ったのです。
SNSをやめた理由
20年前は、インターネットはオタクだけが使うツールでした。
なぜなら、20年前のインターネットは、自分で調べ、実行するという「能動的な使い方」ができなければ機能しなかったからです。
しかし、今のインターネットは大きく変化しています。
過去20年で受動メディアの王様だったテレビが、Youtubeやネットテレビ局、SNSに置き換わりつつあります。
スマートフォンの普及によって、いつでもそれらを観ることができます。また、リアルタイムコミュニケーションと「つながり」によって何時間でも飽きずに楽しめます。
受動メディアの問題点は「ボーッと見ているうちに癖になる」ことです。
ずっとテレビを観続けていると、やがてそれが習慣になり、何時間観ても飽きない。そのうち、それが当たり前の世界となり、テレビの情報が自分の世界のすべてになる。
今、スマートフォンとSNSでこれと同じことが起きているように思います。
つまり、多くの人が24時間ずっとお茶の間でテレビ(ワイドショー)を見ている状態で、テレビの中の世界がその人にとって世界の中心になりつつあるのです。
これまでは、能動的な使い方しかできなかったインターネットが、いつの間にか受動メディアに変化しているということです。(これが、多くの人にネットが受け入れられた理由でもあるのでしょう)
以前は有益だと思えたSNSが、今ではただの受動メディアになっており、有益とは言えない。
そう考えた私は、SNSの利用をきっぱりとやめることにしました。今は、一部の人のSNSの投稿を、月に1回まとめて見る程度にしています。
以前は細切れにSNSをチェックしていましたが、今は1ヶ月に30分も見ていないくらいSNSを利用しなくなりました。
これからの20年で優位になるものは?
では、35歳になった私がこれからの20年で重視していきたいと考えているものはなにか。
それを一言でいうなら「時間」です。
もちろん、これまでも時間は大切なものでしたが、これからはこれまで以上に、ネットにのめり込むことはやめ、仕事の時間も減らし、時間の確保を優先させることが重要だと考えています。
私がこれからの時代で最も重要だと思っているのは「思考の先から生まれるアウトプット(自分の考え)」です。
今、SNSを通じて「価値ある情報をインプットしている」と考えている人はとても多いと思います。
しかし、先ほど述べたように、今のSNSはただの受動メディアですから「価値ある情報」と思えるものは、そのほとんどが「ワイドショーのような価値のない情報」になっています。
価値のある、なしに限らず、情報をインプットすること自体が大切なことではなくなり、これからは自分の頭の中で深く考え、その結果として自分しか出せないアウトプットを出せるようになることが重視される。
むしろ、必要以上の情報のインプットは逆効果かもしれません。情報のインプットに使う時間を捨て、必要最小限の情報で、考える時間を増やすこと。これが、この先20年の優位になると思っています。
システム1を捨てシステム2を磨く
ダニエル・カーネマンという人が書いた「ファスト&スロー」という本では、意思決定の思考回路を「システム1」「システム2」という言葉で説明しています。
「システム1」は深く考えずに出す答え(意思決定)のことです。
目の前にボールが飛んできた時に、「よける?右?左?」とは考えません。私たちは瞬間的に判断し、行動します。
このように、私たちはとっさの状況や、時間や余裕のない時に、自動的に「システム1」を使います。
また、現代のような情報が溢れすぎている時代でも、多くの情報を処理しきれずに「システム1」に頼ってしまいがちです。
付け加えるならば、SNSのような「今、この瞬間」に発せられた言葉や行動は、そのほとんどが「システム1」から来ているものです。
しかし、「システム1」は深く考えずに出された答えなので、時として大きく間違えます。
一方で、「システム2」は深く考えた末に出てくる答え(意思決定)です。
しっかりと考えた末の判断なので、細かな欠陥やミスにも事前に気づきます。ただ、「システム2」は時間と労力を要するため、とっさの判断には向いていません。
私がこれからの20年で「思考の先から生まれるアウトプット(自分の考え)」が重要になると考える理由は、今多くの人が「システム1」で発言・行動し、著名人の発した「システム1」の発言を「有益な情報」として受け取り、そして自分の脳の「システム1」の部分で処理しているからです。(そしてそれらの情報を「システム1」を使って機械的にシェアしている。といえば、ご納得いただけると思います)
私は、「システム1」が複雑に絡み合った世界がSNS(または情報過多の社会)の本質であると考えています。
だからこそ、そこから離れ「システム2」を使って「思考の先から生まれるアウトプット(自分の考え)」に磨きをかけることが次の20年で優位になると考えています。
しかし、「システム2」を使うためには「時間」が必要です。
結果、これからの20年でうまくやっていくためには「時間」をより重視しなくてはならないと考えたのです。
スマートフォンやSNSといった「今いちばんホットなもの」から離れるというのは、時代に逆行する、保守的で時代遅れな考えかもしれません。
しかし、多くの人と同じことをやっていても、そこに優位はありません。今自分が重要だと思うことを大切にし、自分の考えに従って粛々と次の20年に向かいたいと思います。