この商品に本当に価値があるのか、価値がないのかを正しく評価する。
目の前の出来事が危険なことか、そうでないのかを正確に判断する。
その人が本当に凄い人なのか、実は凄い人ではないのかを正確に評価する。
人は「物事の真の価値」を評価するのが苦手です。
世の中で販売されている商品には、値札(価格)がついていて、それが価値の基準になっています。(が、価値のないものに高い価格がついていたり、価値のあるものに安い価格がついていることもあります)
また、価格が付いていないものにについては、他人の評価(レビューなど)に頼ることで、その価値を測ろうとします。
これらはいずれも、「自分が決めた絶対的な基準による評価」ではなく、「他人が決めた相対的な基準による評価」です。
裏付けがあると、正確な価値を図りやすくなります。
例えば、この人材を雇えば会社に毎年600万円の利益をもたらしてくれると想定できるから、この人を年収500万円で雇う価値は十分ある。というような感じです。
危険度で言うと、高層ビルの屋上から飛び降りたら、どうなるかは明らかなので、これは危険な行為だとわかります。
しかし世の中には、評価するのが難しい物事がたくさんあります。
評価するのが難しい理由は、単に自分の知識が及ばない分野だということかもしれませんし、微妙なラインであるために評価が難しいのかもしれませんし、元から判断するのが難しい物事なのかもしれません。
ここで覚えておきたいのは、人は「自分の絶対的な評価基準」を持たない時、「他人の評価」に頼ってしまいやすく、他人の評価というのは大抵「相対的に下された評価」であることが多いということです。
※相対的に下された評価 = 他人の評価もまた、別の他人の評価を元に作られているということ
ユニクロ柳井社長の才能
ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井社長が書いた「一勝九敗」という本には、「自分の能力を正当に評価できること」が自分の才能であると書かれていました。
わかりやすく言うと、自分に対しておごらず、かといって謙遜もしないということです。(人は得てして自分を過大評価してしまう傾向にあるようです。)
この話は、自分に対して下す評価のことですが、 あらゆる物事を中立的に評価し「フィルタのかかっていない真の価値」を見抜くことは、強い武器になると私は考えています。
人には様々なバイアスがある
「バイアス」とは、
- かたより
- 思い込み
- 深く信じ込むこと
- 決めつけ
と言った内容を表す言葉です。
よく「バイアスがかかっている」などと言いますが、これは「フィルタがかかっている」と言い換えても通じると思います。
ここではわかりやすく、「フィルタ」という言葉を使って話を進めたいと思います。
人は本当に様々なフィルタを持っています。
このフィルタが、「中立的に物事を見る力」を阻害しています。
例えば、先ほどの柳井社長の例で言うと、「自分に対する極度なおごり」は自分を過剰に大きく評価する要因になりますし、謙遜しすぎることは自分を小さく評価する要因になります。
また、人には「一貫性を保っておきたい」というフィルタがあります。
対外的に「あの人は本当に素晴らしい人だ」と公言していると、後日その人が、自分が思っているよりも素晴らしい人ではない、落ち度のある人だったと判明しても、その落ち度に見てみぬふりをしてしまいがちになります。
なぜなら、その人が「素晴らしい人ではない」ことを認めてしまうと、自分が「嘘つき」「誤った評価をした人」「人を見る目がない人」「騙された人」などというレッテルを貼られてしまうかもしれないと恐れるからです。
その他にも、人には「1つのことが嫌いになると全部嫌いになる」というフィルタもあります。
わかりやすい例をあげると、
- 注射が嫌い
- 病院も嫌い
- アルコールの匂いも嫌い
のように、「注射が嫌い」という1つのきっかけが連鎖的に、「関連性のある無関係なこと」にまで影響してしまうということです。
対人間で例えると、
- 仕事のできない上司が嫌い
- 上司の性格も嫌い
- 上司の顔や声も嫌い
- 上司が好きな芸能人も嫌い
※部下がいる人は「上司」を「部下」に置き換えてみてください
のように、「仕事ができない」ということが、その人のことを嫌いな理由だったのに、それがいつの間にか、性格や見た目、果ては上司とは無関係な「芸能人の◯◯が嫌い」というところまで波及してしまうのです。
2つの力が合わさると大きな問題に
これまで、
- 人は絶対的な基準ではなく、相対的な基準で評価しがち
- 正しい評価を妨げる様々なフィルタを持っている
ということをお話ししてきました。
この2つが合わさった時、人は大きな間違いを引き起こしてしまうと私は考えています。
人は大きく4つのカテゴリに分かれます。
- 多数派に同調する人
- 影響力のある人に同調する人
- 同調はしないが中立的にものを見れない人
- 中立的に物事を見れる人
※属すカテゴリは、その時の自分の心理状態や、自分の得意なことか、知らないことかによっても変わります。
最も多いのは「多数派に同調する人」です。
わかりやすく言うと「何も考えていない人」とも言えますし「単に興味がない人」と言い換えても良いと思います。
「影響力のある人に同調する人」は、わかりやすい表現で言えば「イエスマン」です。
イエスマンなのですが、彼らは大抵「自分の意志でイエスと言っている」と本気で思っています。
ただ同調しているだけなのに、「自分の意見として下した評価だ」と思い込んでいることは意外と多いものです。
「同調はしないが中立的にものを見れない人」は少々やっかいです。
こういう人は「自分の絶対的な基準」で評価している点は良いのですが、フィルタがかかっていて、正しい評価ができなくなっている人です。
そして大抵、こういう人は頭の良い人だったり、影響力のある人だったりします。
「影響力のある人」が、間違った情報を、あたかも正しいことのように発信し、「影響力のある人に同調する人」がそれを支持する。そして最終的に、みんなが支持しているという理由だけで、多くの人が支持する。
例えば、「大企業が満を持してリリースした製品が、ありえないほどダサかった。」という経験はないでしょうか。様々なプロセスを経てリリースされているはずなのに、なぜこのようなことが起こってしまったのか。
多くの人が一斉に間違えるという現象は、こうやって引き起こされていることが多いです。
掘り出し物が見つけられる人でありたい
このように、「中立的に物事を評価する力」は極めて重要です。しかし、この力を身につけるのはそう簡単ではありません。
なぜかというと、中立的に物事を評価できるようになるには、
- 絶対的な基準で評価するための「ものさし」
- 自分の答えが正しいと信じる「自信」
の2つが必要だからです。
しかし、「1.ものさし」は簡単に身につけられるものではなく、知識の習得と経験によって身につくものです。得るには時間がかかります。
そして「2.自信」は人が苦手としていることです。
「ものさし」を身につけることで、「自信」は身につきやすいですし、「自分の答えに自信を持つことは元々、人が苦手とすることである」ということを知ると、「自信」の力をより発揮しやすくなると思います。
「ダメな人というレッテルを貼られている人」の中から、素晴らしい人を見つけ評価する。
「絶対に成功しないと言われている事業」の中から、大きく成功する事業を見つけチャレンジする。
「価値がないと思われている会社」の中から、大きく成長する会社を見つけて投資する。
自分自身の絶対的な評価基準で中立的に物事を判断し、掘り出し物を見つけられる人間でありたいものです。